中国語教室 ハンズアカデミー 東京・渋谷・神田|2011年1月 公開中国映画情報

2011年1月 公開中国映画情報

 

『カンフーサイボーグ』

2009年に東京国際映画祭で上映されて以来〜「エンタテインメントの雄、香港映画×中国映画が贈る、これが『トランスフォーマー』への返答だ!!」と銘 打たれた『カンフーサイボーグ』が公開されます。中国=香港映画であり、香港ギャグ・フレーバーと大陸的感性が同居した、SFアクション大作…でありなが ら、「サイボーグ警官」というハイテクなキャラが主人公でありながら、そして時は2046年の設定でありながら、舞台の中国の村はまさによくある田舎風。 そして事件などさほどなさそうな地元警察の警察署長タイチョンを演じるフー・ジュンも、『レッドクリフ PartI』や『レッドクリフ PartII』で見せたようなカッコよさは封印し、愛嬌あるイモ兄ちゃん風情を存分に活かしています。

アンディ・ラウに風貌を似せてデザインしているサイボーグ・コップ、K1を演じるのはアレックス・フォン(方力申)。2008年に公開された「アジア新星 流FOCUS FIRST CUTS」の中の一本『I’LL CALL YOU<得閑飲茶>』(06)では気が付きませんでしたが、ミュージック・ビデオで見せる横顔などは端正で、確かにアンディに似ています。少 年のような雰囲気のある彼ですが、元水泳選手(00年シドニーオリンピック水泳香港代表)。選手時代から人気が高く、引退後の01年に俳優デビューしてい ます。彼のサイボーグ振りはなかなかはまっていますが、K1が闘うことになる相手、最新型サイボーグK88を演じるウー・ジン(『インビジブル・ターゲット』)こそ超人的カンフーの達人、ある意味サイボーグ的ですが、もっと彼の生身のカンフーが見たいところではあります。

日本で上映されるのは広東語バージョン。筆者は年末に偶然山東省のホテル滞在中にテレビで放映されていた本作を見直しましたが、こちらはもちろん北京語 バージョン。オフシーズンの山東省の観光地でのんびりした雰囲気と相まって、奇想天外に展開するストーリーの結末を知りながらも最後まで見ていたのでし た。それはやはり機械V.S.感情という、古典的な葛藤が存在しているからでしょう。そしてこれなら2046年になってもサイボーグに実用化には至ってい ないのでは、という安心感(いや、不安感か?)も得られるのでした。

監督・脚本:ジェフ・ラウ(劉鎮偉)

香港生まれ。イギリスで学んだ後、香港に戻り、広告業や金融業で働き、1980年に世紀影業公司と五洲世紀影業公司を設立し、プロデューサーとして『レス リー・チャン 嵐の青春』(82)など、ニューウェーブ的作品を送り出し話題を呼んだ。87年『バンパイア・コップ』で監督デビューを飾りヒットを飛ばす。そして90年 にチャウ・シンチーをスーパースターに押し上げた『ゴッドギャンブラー賭聖外伝』でコリー・ユンと共同監督で手掛ける。92年には『黒薔薇VS黒薔薇』を ヒットさせるが、技安の名で脚本を書いている。またプロデューサーとしては、ウォン・カーウァイ監督と組んで『恋する惑星』(94)『楽園の瑕』(94) 『天使の涙』(95)を手がける。近年では04年『カンフーハッスル』でプロデューサーを、『西遊記 リローデット』(05)では監督を手がけている。

主な監督作品:『バンパイア・コップ』(87)『ゴッドギャンブラー賭聖外伝』(90)『アンディ・ラウのスター伝説』(93)『大英雄』(93) 『1000の瞬き』(94)『フル・ブラッド』(94)『チャウ・シンチーのゴーストバスター』(95)『チャイニーズ・オデッセイPart1 月光の恋』(95)『チャイニーズ・オデッセイPart2 永遠の恋』(95)『無限復活』 (02/未)『天下無雙』 (02/未)『西遊記 リローデット』(05)『水も滴るお嬢様』(10)

協力:宣伝 フリーマン・オフィス

 

『イップ・マン 葉門』

2009年の香港電影金像賞で最優秀作品と最優秀アクション設計賞(アクション監督:サモ・ハン、リョン・シウホン)に輝いたウィルソン・イップ監督の『イップ・マン 序章』(08/昨年の東京国際映画祭で上映)に続くパート2として製作された本作。日本ではこちらが先に公開となりました。

詠春拳の達人でブルース・リーの師匠でもあるイップ・マン(葉問 1893-1972)の生涯を描いた二部作の後編。前編の舞台は1930年代の広東省佛山。中国南方武術が盛んな佛山でもイップ・マン(ドニー・イェン) の実力は抜きん出ており、その控えめな人物像からも武術家としての存在を確立するようになる。しかしそれもつかの間、30年代末の日中戦争勃発後、佛山は 日本軍に占領される。それ以降イップ・マンも苦難に見舞われ、果ては日本軍兵士たちに武術を教えることを拒否したために、空手の名手である日本軍将校(池内博之) との対決に追い込まれる。『イップ・マン 葉問』は、その後イップ・マンが妻子とともに佛山からイギリスの植民地であった香港に逃れてきたところから始まる。武館を開いたものの、香港では無名の イップ・マンに師事しようとする者は一向に現れない。ある日イップ・マンに対戦を挑んで見事に負かされた若者ウォン・リャン(『スナイパー:』(09)のホァン・シャオミン)が最初の弟子となり、ウォンの仲間が続々と入門して武館が軌道に乗ったかに見えたが、そこには香港武術界の掟があった。イップ・マンは古参の達人たちとの対決を余儀なくされる…。

行く先々で決闘が待ち受け、争うことを避けるための闘いを続けるイップ・マン。香港一の洪拳の師匠ホン(本作のアクション監督でもあるサモ・ハン・キン ポー)と一戦交えるが、これが芸術的激闘。詠春拳とイップ・マンの優雅さを際立たせるサモ・ハンのアクション演出は見事です。サモ・ハンとドニーは、ド ニーがアクション監督として香港電影金像賞で最優秀作品と最優秀アクション設計賞を受賞した『SPL/狼よ静かに死ね』(05) でも壮絶な死闘を繰り広げました。『SPL/狼よ静かに死ね』以降も『かちこみ!ドラゴン・タイガー・ゲート』(06)、<導火線> (未・07)そしてイップ・マン二部作とウィルソン・イップ監督はドニーと立て続けに撮っていますが、本作は50年代の香港の雰囲気と衣装も相まって、ド ニーの控えめな演技も功を奏して武術の技以上に根底に流れるイップ・マンの、詠春拳の、そして中国武術の精神と思想が鮮明に打ち出されています。

そして中国武術の誇りが試される事件が起こる。1842年の南京条約で清朝からイギリスに永久割譲され、香港島はイギリスの統治下にあった。1941年以 降は日本軍に占領され、1945年に日本が敗戦してもイギリスの統治が復帰、植民地状態は変わらなかった。ある時ボクシングの試合が催され、前座で若手の 中国武術家たちがその型を披露したが、イギリス人ボクサーが武術を侮辱し武術家たちを罵倒したことで、小競り合いからついにはホンがボクサーと一対一で異 種格闘技戦をすることになり、壮絶な覚悟を持って闘う。映画の中ではイギリス人の警官や役人が中国人を見下し、香港を我が物顔で牛耳る様が描かれている。 その粗野で野蛮な描写は見ていて気分のいいものではないけれど、香港人のイギリス統治に対する心情が反映されているのだろうか。このボクシング試合は本当 にあった事件ではないかもしれないが、武術に対する無知と西洋優位主義から似たような場面があったとしてもおかしくはない。

ツイスターという狂犬のようなボクサーを演じているダレン・シャーラヴィは、イラン系イギリス人俳優。7歳の頃から柔道を習い、ブルース・リーやジャッキー・チェンの映画を見て俳優を志し、空手、ムエタイやキック・ボクシングを学んだとのこと。香港に渡り、90年代から悪役を中心に映画に出ています。

ツイスターの挑戦を受けて闘うイップ・マン。それは中国人の、中国武術の誇りのためであると同時に「身分を問わず重要なのは品格だ」という思想を身をもって表す高尚な行為でもある。

時代に翻弄され、苦境に立たされながら1972年に78歳で没したイップ・マン。出身地の広東省にある沸山市博物館のサイト(この時期だと中国正月を祝う爆竹音が出ますのでご注意下さい)ではイップ・マン堂(簡体字では叶问堂)のヴァーチャル・ツアーがあります。展示写真などすべてクリックして見られるようになっています。

イップ・マンの長男、イップ・チュン(葉準)は健在で、86歳の今も詠春拳武術會/Wing Chun Martial Arts Association(1992 年に設立)を率いて指導をしています。7歳から父に詠春拳を習い始めたイップ・チュン。イップ・マンが香港へ移住した時に24歳だったチュンは沸山に残り ましたが、文化大革命を逃れ1962年に弟のチンとともに香港に移住しています。会計士や新聞記者として働いていたチュンでしたが、父に請われ1967年 に香港詠春拳體育會に参加。以降、国内外の後進の指導にあたっています。チュンは『イップ・マン -序章-』のコンサルタントも務めています。

本作の観客動員5,000人を超えると二部作の前編『イップ・マン -序章-』が公開になります。新宿武蔵野館のサイトでカウントダウンが行われています。

2010年はこの後もドニー・イェン主演作の公開が控えています。『孫文の義士団』、『処刑剣 14BLADES』ともコスチュームものの時代劇ですが、『SPL/狼よ静かに死ね』のようなドニーの美意識〜ナルシスト振りが展開する世界もまた見たいと思っている筆者です。

協力:宣伝 リベロ

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松下由美・・・・東南アジアとヨーロッパに長く滞在。
映画祭・映画イベントの司会・英語通訳や映画撮影の製作を担当している。
アート、インディペンデント系、アジア作品を多く担当し、中国語圏作品好きも高じて中国へ短期留学経験あり。
Sintok シンガポール映画祭実行委員。
URL:http://www.sintok.org/
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